2017年02月20日

「平和と紛争学」という学問。

伊勢ア 賢治著「テロリストは日本の「何」を見ているのか」幻冬舎新書、¥864

アメリカ合衆国の第45代大統領に就任したトランプ大統領。就任前から現在にいたるまで、さまざまな問題を引き起こし、アメリカのみならず世界中を混乱に陥れていると言えるようです。保護主義的な政策はうまくいかず、アメリカの凋落がいっそう深まるのではないかと私は思っています。損をするのはアメリカなのではないかなと思っています。移民の制限も、うまくいくはずがない。

それはともかくとして、私はトランプ大統領に期待していることがあります。それは、日米関係がまっとうなものになること。日本で、沖縄だけが「一人負け」の状態をいつまでも放置していてよい訳がない。でも沖縄以外の地に基地を移転することには反対。そんな議論の中で、トランプ大統領が「日本はもっと経費を負担しろ」と言い出した。これは、実はよい機会なのではないかと思います。米軍関係者などによる事件が起きるたび、日米地位協定のような、納得しがたい状態が続いてよい訳がない。中国の海洋進出、あるいはいわゆる「台湾有事」を考えたときに、沖縄が戦略的に最適な場所にあることは、その通りなのでしょう。有事の際に佐世保や岩国から出るより、沖縄から出るほうがよいのだろうと。しかし、沖縄の人が犠牲になる「事件」が起きるたび、「これはまちがっている」と思います。犯罪者が正当な裁きを受けず、アメリカへ帰って行ってしまうのは、明治初期の不平等条約のころと変わっていないと強く思います。これを機会に、日本の米軍基地に対する経済的負担を増やさず、沖縄の負担を減らすようになってほしいと願っています。

さて、この「テロリストは日本の「何」を見ているのか 無限テロリズムと日本人 (幻冬舎新書) - 」です。無限連鎖を続けているように見えるグローバルテロリズム。世界中を巻き込む大きな戦争は起こりにくくなっている一方で、恐怖をまき散らす「テロリズム」はなくなる気配がいっこうにない。一方、日本はすでにISなどから敵対視されている上、多くの原発を抱えてかなり危険な状態で放置されている。その中で日本ができることは何かを問い、考察しています。ゲリラに勝つために、民衆をこちら側に引きつける。そして、民衆が自らの安全と将来を任せられる優秀な傀儡政権を作ること。そのための米軍のふるまいを定めた「COIN アメリカ陸軍・海兵隊のフィールドマニュアル:Counter Insurgency)」、すなわち「対インサージェント軍事ドクトリン」の日本版を筆者は提唱しています。それは、日本がアフガニスタンでやっていたこと。安倍政権がアメリカの「手先」に陥らず、独自の日本外交を進めていけるよう期待しています。

メモ。
結局、原因は、「資源」の消費を可能にする「グローバル経済」なのです。自由主義経済は、必ず格差を生みます。それが国内で完結していれば、構造の犠牲となる下層は容易に可視化でき、福祉政策等のセーフティーネットの整備へと向かうのでしょうが、グローバル経済下では、その下層は可視化するには広すぎるのです。以後五智のいい生活を守りたい消費者の防衛意識は、彼らを都合の悪い現実から目を背けさせてしまう。情報や経済のグローバル化は、昔ならその地域に限定されていた「不満」をも国境を越えてグローバル化する。そして同時に、IS的なものを利してゆくのです。 (p.102)
軍事的に勝利できないとわかったグローバルテロリズムの時代を生き抜くには、「あちら側」のなかに「まともな敵」を見出して味方にしてゆくしか道がないのです。このなかで、私たちの「自由」の価値観をどうするのか? この問題から我々はもう逃げられないのです。 (p.118)
ただひたすら憎悪と復讐の感情にかられてテロリズムに対処すると、それを徹底して排除する方向に向かいます。しかし、そのテロの主謀が、ある宗教や宗派や民族などの属性で括られると、私たちは往々にして、その属性全体を嫌悪する傾向があります。ここが問題なのです。なぜなら、インサージェンシーであるテロリズムは、その属性を持つ民衆の中に巣くうからです。我々の攻撃には、こういう民衆を傷つけるリスクが、いつもつきまとう。だから、攻撃すればするほど、敵が増えてゆくという悪循環が止まらないのです。 (p.119)
つまり、人権とは普遍的な価値ではなく、時と場合によって都合よく使われるものだということです。これが思想としての、人権の限界なのかもしれません。 (p.126)
イスラム法には、欧米流の人権の考え方がありません。(中略)そういうのを見るにつけ、人権思想もまた一つの「宗教」なのだと思います。 (p.127)
狭い地球の上で私たちが生き延びていくには、たとえ軸になる価値観を共有できない人間が隣にいても、それを認める必要があります。そのことを学習すべき時期に来ている気がします。 (p.128)
抗体を身につける究極の方策なんてありません。でも、その抗体の「低下」をあらかじめ感知することは、ある程度、できると思います。(改行)それは、障害者やLGBT(性的少数派)、そして特定の宗教宗派など、いわゆるマイノリティへの攻撃、そして「ふつう」であることへの過剰な意識の高まりなどに注意することです。 (p.135)
この分野の学術的な発展には、優良な移民・難民を積極的に受け入れる必要があります。そういった人材が教師となり、そしてジャパンCOINの担い手となる。それには、まず、彼らが敬愛し、信頼し、忠誠心を持てる民族に日本人がならないとダメなのです。 (p.200)


テロリストは日本の「何」を見ているのか 無限テロリズムと日本人 (幻冬舎新書) -
テロリストは日本の「何」を見ているのか 無限テロリズムと日本人 (幻冬舎新書) -
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2017年02月09日

川久保篤巡査部長シリーズ。

佐々木譲の小説を集中して、続けて読んでいます。

新潮文庫に「川久保篤巡査部長シリーズ」があります。今のところ2冊だけかな? 

シリーズ1作目の「制服捜査 (新潮文庫) - 」を読みました。

地味なシリーズだと思います。派手な事件が起こる訳ではなく(「暴雪圏」のほうは少し派手かな)、地域に根ざす駐在が出会う、日常から少し逸脱した「事件」。事件は必ずしも解決しない、また駐在警官が大立ち回りをするとか、犯人を追い詰めて逮捕するとか、そんなものもたくさんはありません。本当に地味な感じです。でも主人公の川久保篤巡査部長が「いい味」を出している。小さな町の「駐在さん」として、人間関係を見つめる。中には失敗もあり、苦い思いを味わうこともある。解決したといっても、手柄は他の人が取っていくことさえあります。

「わたしは制服の駐在警官です。地元のささいな情報に聞き耳を立てる。それが任務だ。こういう事件の捜査と被疑者逮捕は、担当捜査員の仕事。気にしてません」 (p.300)

という言葉が印象的です。

先に「暴雪圏」(シリーズ2作目)を読んでしまったのですが、1作目が後でも大丈夫です。ただ、けっこう大きな事件が起こってしまったので、この志茂別駐在所ではなかなかネタがないのかもしれませんが(笑)、ぜひこの川久保篤巡査部長の活躍を見たいと思います。刑事として札幌に返してあげたら、きっと活躍なさると思うのですが。また、志茂別には単身赴任で来ていらっしゃるので、家族との交流あるいはすれ違いも見てみたいものです。

佐々木譲の小説に登場する警察官たち、皆さんあまり家庭には恵まれていないようで(笑)、「北海道警シリーズ」の佐伯と小島、どちらも離婚していますし、つきあいがはじまるのかと思ったらぜんぜんはじまらないし(笑)、プライベートが充実しないようです。「ささやかな日常」というのを、味わわせてあげたいと思うのですが、いかがでしょうか? 警察官という職業、かなりプライベートを犠牲にする仕事だと思います。うちの職場に「警察OB」というかたがいらっしゃり、ときどき話をするのですが、本当にたいへんなお仕事をなさってきたのだと思います。警察官とか、あの制服を見るとすごくいやーな気持ちになっていたのですが、うちの職場のかたやこの小説のおかげで、私の見る目が少し変わってきたと自覚しています。日常的に警察のお世話になることはありませんが、少なくともご迷惑をかけないようにしたいと思っています。

制服捜査 (新潮文庫) -
制服捜査 (新潮文庫) -
暴雪圏 (新潮文庫) -
暴雪圏 (新潮文庫) -
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2017年01月30日

立て続けに佐々木譲を読んでいる。

警察小説で有名なようですね(他の小説もあるようですが)。佐々木譲の小説を立て続けに読んでいます。

会社の同僚から勧められました。いちおう、人から勧められたら読むようにしていますので。そうしたら、これがなかなかおもしろい!

最初に読んだのが、「警官の血〈上〉 (新潮文庫) - 」。戦後すぐの荒んだ時代から、およそ現代まで、三代にわたる警察官の親子がたどった運命を描いています。勧めてくださった方は、「終わり方がちょっと……」とおっしゃいましたが、私はとても気に入りました。
警官の血〈上〉 (新潮文庫) -
警官の血〈上〉 (新潮文庫) -

一方、次に読んだ「北海道警シリーズ」の「笑う警官 (ハルキ文庫) - 」「警察庁から来た男 (ハルキ文庫) - 」「警官の紋章 (ハルキ文庫) - 」(とりあえず、この3冊まで読んだ)は、いずれもごく短い時間、一晩の出来事を書いていて、「警官の血」とは対照的。張った伏線はきちんと回収してあり、また他のシリーズにも活かされているので、同じ物語をちがう角度から見せてくれるおもしろさもあります。
笑う警官 (ハルキ文庫) -
笑う警官 (ハルキ文庫) -
警察庁から来た男 (ハルキ文庫) -
警察庁から来た男 (ハルキ文庫) -
警官の紋章 (ハルキ文庫) -
警官の紋章 (ハルキ文庫) -

これからは警察小説を読み続けていきたいと思っています。幸いに、これを紹介して下さった同僚(先輩です)が続けて佐々木譲の本を何冊も購入していらっしゃるので、借りて読ませていただきます。うちの本が増えることはない。家が小説で埋まることはないので安心しています(笑)。ありがたいことです。

新たに、「川久保篤巡査部長シリーズ」というのも読みはじめました。「暴雪圏 (新潮文庫) - 」。これも同じ北海道の警察を描いていて、直接の関係はないものの「北海道警シリーズ」の設定を活かしています。こうなると他のシリーズも、あるいは続刊も気になるところですが、自分で買っていないのでなんとも(笑)。早く次の本を貸していただきたいというのが本音ですが、借りている同僚に確認したところ、「ちょっと休憩」とのこと(笑)。首を長くして待っています。
暴雪圏 (新潮文庫) -
暴雪圏 (新潮文庫) -
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2017年01月23日

9割は大げさだろうと思うけど。

キャサリン・A・クラフト著「日本人の9割が間違える英語表現100 (ちくま新書1230)」、¥842

ところどころで「知らなかった!」と叫ぶことになりました。読んでいておもしろい本。

高校までに習った文法書の影響が大きく、「make it a rule to なになに」(056)とか「as is often the case with だれそれ」(046)とか、よくは使わないけれども、覚えているものがありますね。まあ言わないよなとは思いますけど(笑)。「mind my なになにing」の項では、
Do you mind my smoking?
= Do you mind me smoking?
= Do you mind if I smoke?
などと書いている文法書がたくさんありますが、それは間違いだと言わざるをえません。(041、p.097)など、うならされます。

「unless = if notとは限らない」(044)などは「完全イコール」だと思っていました。

わたくしの場合でいうと、アメリカ人の友だちに教えてもらったことで、
「遊びに行く」にはplayを使わない(029)
「恥ずかしい」にshyを使わない(054)
などは知っていました。playには性的な意味が含まれます。女性は絶対に使えない、男性も使うべきではないと教えてもらいました。また、shyについてはかなり悩んでいました。「shyとは言えないけど、じゃあ何ていうかな…… あえて言えばembarrassedかなー? でもちがうんだよ。とにかく、shyではないことだけはたしか」と言っていました。goodなんかの語感もあまり知らないですよね。fineとかniceとかあるけど、goodは別格だと聞きました。very goodと副詞を使う表現があるので、goodもなんかそんなもんだろ、的な取り方をしていましたが、そうではない。goodは実は「very good」なんだと聞いたことがあります。

また、英語の授業で習ったこともいくつかありましたね。
現在完了形でのsinceとforの使いわけ(047)
see a dreamとはいわない(053)
「put on」と「wear」の使いわけ(066)
convenientは人を主語にできない(078)
smellを動詞で使う(096)
smellって、「匂い」ではなく「臭い」なんですよ、名詞ならね。

最近、外国の人と会話する機会はまったくといってよいほどなくなってしまったのですが、会話の機会がないと忘れてしまいますね。

日本人が理解していないことを説明するのに、わたくしは「【DVD-ROM付】オックスフォード現代英英辞典 第9版 - 」は非常にオススメします。名詞、動詞といった基本的な品詞で、理解していないことが山ほどあることを、これを読んで実感します。機会があればぜひご一読を。わたくしは第8版は持っていましたが、現在第9版がDVD-ROM付きで出ているようです。買っておこうと思っています。


日本人の9割が間違える英語表現100 (ちくま新書1230) -
日本人の9割が間違える英語表現100 (ちくま新書1230) -

【DVD-ROM付】オックスフォード現代英英辞典 第9版 -
【DVD-ROM付】オックスフォード現代英英辞典 第9版 -
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2016年09月18日

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

加藤陽子著『それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫) - 』新潮文庫、¥810

これはよい本。今年読んだ今のところ1番。最近ブログを書いていなかったけど、きちんと書いておきたいと思いました。

夏になると戦争関連本が本屋に出てきます。奥付を見るとこの本は今年7月1日の出版ですが、文庫になる前は7年前に出ているようです。7年たってもこの本の価値は変わっていないですね。文庫本という形で多くの人の目に触れるようになればとてもよい、実際そうしてわたくしの目にも触れたのだから、よかったと思います。

この本、まず内容がよい。歴史の本ですが、「はじめに」では「現代における政治システムの機能不全」について述べられています。現在の選挙制度では与党が国民に人気がないときは総選挙が行われないこと、小選挙区下においては投票に熱意を持ち、人口集団の多数を占める世代の意見が突出して尊重されるという2つの問題をあげています。
これからの日本の政治は若年層贔屓と批判されるくらいでちょうどよいと腹をくくり、若い人々に光を当ててゆく覚悟がなければ公正には機能しないのではないかと思われるのです。(p.9)


序章では911の同時多発テロと日中戦争の類似、リンカーンのゲティスバーグ演説と日本国憲法の類似、戦争が持つ敵対国に対する作用などについて述べ、歴史を学ぶことの意義について述べています。立ち読みでは少し長いかもしれませんが(笑)、ここだけでも読まれたらと思います。ていうか、ここまで読むと買わずにはおれなくなります(笑)。

第1章の日清戦争から、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変と日中戦争、そして最終第5章の太平洋戦争へとつながります。日清戦争を、「侵略と被侵略の物語」ではなく、「競い合う物語」として過去を見る。こういう言い方をして、右の方が喜ぶ結論につながるわけではないので、念のため(笑)。

ちょっと長くなりますが、あとがきを引用します。
神話とはつくづくよくできていると感心させられますが、歴史とは、内気で控えめでちょうどよいのではないでしょうか。本屋さんに行きますと、「大嘘」「二度と謝らなないための」云々といった刺激的な言葉を書名に冠した近現代史の読み物が積まれているのを目にします。地理的にも歴史的にも日本と関係の深い中国や韓国と日本の関係を論じたものにこのような刺激的な惹句のものが少なくありません。(改行)しかし、このような本を読み一時的に溜飲を下げても、結局のところ「あの戦争はなんだったのか」式の本に手を伸ばし続けることになりそうです。なぜそうなるかといえば、一つには、そのような本では戦争の実態を抉る「問い」が適切に設定されていないからであり、二つには、そのような本では史料とその史料が含む潜在的な情報すべてに対する公平な解釈がなされていないからです。これでは、過去の戦争を理解しえたという本当の充足感やカタルシスが結局のところ得られないので、同じような本を何度も読むことになるのです。このような時間とお金の無駄遣いは若い人々にはふさわしくありません。(pp.477-478)


この本についてもう一つだけ伝えておきたいのは、参考文献がしっかりしていることです。この本を読み終えた後、すぐ本屋に走り、長谷部恭男著「憲法とは何か (岩波新書) - 」(岩波新書)と山川の「もういちど読む山川世界現代史 - 」を購入しました。日本の歴史も復習しておきたいと思いました。

憲法とは何か (岩波新書) -
憲法とは何か (岩波新書) -
もういちど読む山川世界現代史 -
もういちど読む山川世界現代史 -
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