2015年06月15日

さあ運動をはじめよう!「スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?」

デイヴィッド・エプスタイン著「スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?: アスリートの科学」早川書房、\2,268

今年も半年が過ぎようとしていますが、これまでの中で今年の1番です。よい本で、おもしろかった。長かったですが、読み応えのある本でした。多くのかたに読んでいただきたいと思うような本でした。

私はスポーツが好きで、テレビも自分で見るのはスポーツ中継、あるいはスポーツ選手に関わるテレビが多い。選手が出てくるものでは、ドキュメントなら見ますが、バラエティのような、選手をバカにしているようなものはほとんど見ません。ダウンタウンとかがやってる番組も見ませんね。

話がそれました。

ある競技で一流の選手、たとえばイチローなら、どんな競技をしていても優秀な選手になると思います。しかし、「超一流」になるかと問われると、ちがうような気もする。

私はサッカーやバスケットボールが好きで、その道で一流とは言わないまでも、上位15%ぐらいに入る程度にうまく/強くなれたらと思っていました。しかし、それはかなり大変だと思う。小学校のころから、自分はどちらかといえば長距離系・持久系のスポーツが得意だったように思う。子どもを見ていてもそれは感じる。子どもには、陸上をしたらと思いすすめていましたが、どうでしょうか?

「1万時間の法則」という、よく知られた経験則があります。一流のアスリートでも演奏家でも、練習時間を積み上げていくとだいたい1万時間程度を費やしている計算になる。1日に5時間を使うとすると、2,000日≒5年半かかるという計算。

では、1万時間を費やせば、誰でも一流になれるのか? いや、誰でもというわけではありません。それがこの本の主題。大事なのはハードウェア(その人の遺伝子)とソフトウェア(練習)。ちょうどそれがマッチングしたところに、スーパースターが生まれるようです。

ただし、人間の身体は不思議なもので、特定の遺伝子の有無だけが成功を約束するわけではない。この話、たしか福岡伸一著「生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)」にも出てきたような? 特定の遺伝子をなくした「ノックアウトマウス」を作っても、意図したとおりの実験結果が出るとは限らない。むしろ、特定の遺伝子がなければ周囲の遺伝子がそれを補うように強調されるそうです。

著者は何度も強調していますが、すばらしい遺伝子があればすべて優秀なアスリートになれるのかと言えば、そうではない。しかし、優秀な遺伝子がなければ一流にはなれない、とは言っています。

ん?

本文中にもたとえが出てきますが、アフリカのピグミー族は、どんなにがんばっても、NBAで活躍するような身長2mを超える選手は出てこないだろう。ジャマイカの選手は、マラソンで世界記録を更新すると言うことも、たぶんないだろう。

だから遺伝子は大事なのです。でもそれだけではない。「優秀な遺伝子を持っていれば、優秀なアスリートになれる」という命題は、成り立たない。その逆、「優秀なアスリートならば、優秀な遺伝子を持っている」は、成り立つこともあるが、本当のところはよくわかっていない、というのが正しいようです。

メモ。
データは、チェスや音楽から野球やテニスに及ぶあらゆる分野で、技能に対する考え方を明確に裏付けている。その考え方とは、「ソフトウェアでなくハードウェア」(引用者注:「でなく」に傍点)というパラダイムではなく、「持って生まれたハードウェアおよび学習によって身につけたソフトウェア」(引用者注:「および」に傍点)の両方が重要というパラダイムに基づいている。(p.64)

線維タイプの割合のような目には見えない身体特性を無視すると、きびしいトレーニングは誰にでも効果を発揮するという考え方の犠牲になる選手もいるだろう。(p.157)

ACTN3遺伝子がスプリント能力に影響を与えているように見えるとはいえ、それだけでスポーツを選択してしまうのは、一つのピースを見ただけでジグソーパズルの全体図を決めてしまうようなものだ。パズルを完成するためにそのピースが必要なのは間違いないが、他のピースを見てみないと意味のある絵にはならない。(p.211)

これまで述べた各種の研究結果は、史上最高のアイスホッケー選手と謳われた、ウェイン・グレツキーのかの有名な言葉に集約されている。「おそらく、神が私に与えたのは才能ではなく、情熱であろう」(改行)もしかしたらその二つは、切り離せないものかもしれない。(p.318)

となれば、「アスリート遺伝子」を発見するという思いつきはいずれも、一〇年前、ヒトゲノムの全塩基配列が解読されたとき頂点に達した希望的観測の時代の、絵空事だったと確信せざるをえないのだ。その後、科学者たちは遺伝子の「レシピブック」の複雑さをいかに理解していなかったかということを理解した。人間のほとんどの遺伝子の働きはいまだ謎である。たしかに、ACTN3遺伝子によって、地球上の約一〇億人の人々がオリンピックの一〇〇m走決勝には残れないとわかるかもしれない。だが、おそらくその一〇億人の人々は、そんなチャンスはもともとないということを知っているだろう。(pp.348-349)

人は誰も、運動やトレーニングを通してその人それぞれに益するところがあるものだ。始めてみることは、最先端の科学でさえなしえない自己発見の旅へ出かけることなのである。(p.380)



posted by zxcvaq at 06:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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