2008年11月24日

サイエンス・サイトーク/大前研一氏「予測力を高める方法 2008/3/9」

サイエンス・サイトーク/大前研一氏(経営コンサルタント、経済評論家、ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長)「予測力を高める方法 2008/3/9」

このところ、大前研一氏にいろいろなところで出会っています。いいことをいっておられますね。必ずしも好きではなかったのですが、ふだんの生活でもヒントになることがたくさんあるように思います。

・ 1995年に東京都知事選に打って出て、青島幸男氏に破れた。当時は勝つ予測をしていた。思い出したくもない。私は日本を何とかしたいと思い、23年勤めたマッキンゼーを早期退職して、提言を書いた。東京だったらこうする、日本だったらこうするという「平成維新」という概念を書き、文藝春秋に「日本改造計画」として「新薩長連盟の形成」、要するに明治維新の時の薩長連合のような知事連合を作ろうと。この計画だと東京の財政もよくなるし、日本もこんなによくなるのだから、理解してくれたら投票してくれるだろうと、こういう想定のもとに自分の全財産、6億円使ってやった。マッキンゼーの退職金を全部持って行かれたのだけど、どこで予測が外れたかというと、投票者というものを私は理解していなかった。マーケティングと同じだろうと、そっちはやっていたが、「合理的な選択をしない」というのが私の予測の外れたところ(笑)。
・浮動票、無党派の人がいるということはわかっていた。ムードがここまで選挙を支配すること、たとえば青島幸男さんはずっと続いてきた鈴木都政に対して、東京に何をするというより怒りだけを言ってきた。その怒りが共感を生んだ。またあとになって反省して文藝春秋より「大前研一敗戦記」というのを出したんだけど、それで足を洗って成仏した。
・そのときに私が政治が無理だと思った最大の理由は、実は「政策には何の意味もない」ということ。青島さんが選挙の時に言ったことは「都政から隠し事をなくします」というこれだけ。他に何をするといわないし、またそれが具体的に何を指すのかわからない。私がそのときに自分の反省を込めて感じたのは「これはすごい大和言葉だな」と。私だったら「透明性を増す」とか言ったはずなのですけど。この人はシナリオライターだけにすごいなと。そのときに瞬間的に思い出したのはテレサ・テンの「愛をつぐなえば別れになる」と(笑)。冗談じゃない、なんで愛をつぐなったら別れになるんだと。私なんかどっちかというと「恐い」と引いちゃうんですけど。これが私が負けた理由だと。私は悔しいからしばらくオーストラリアに行って砂漠を走っていたけれども、そのときに突然、自分にはこの「愛をつぐなえば別れになる」が言えないんだよねと。だって愛をつぐなったら一生懸命もっと愛せばいいじゃないかと(笑)思うのに、別れになっちゃうというのは自分のロジックにはない。「都政から隠し事をなくす」、これが政治なら自分には無理だと。「丸の内の坂本竜馬」といい気になって経営改革はできても、都民の心に響く言葉は私は出せないと。永遠に出せないと。私が育ってきた環境は問題解決をするにはどうしたらいいかとか、こんなことで飯を食ってきたから。
・私のトレーニングというのは原子力のエンジニアですから。そういう傾向があって、マッキンゼーにいって経営の改革とかできるようになって、これはかなりソフトな面もあるのですけど、しかしとげ抜き地蔵にいっておばあちゃんのてをさすりながら1票取っていくしんどさというのはやっぱりすごいなと(笑)。青島さんはそれを的確につかんでいた。
・多くの友達がもう一度やってみたらというが、私は乗らないよと(笑)。私は今、人材育成をひたすらやっている。できることは人材育成とか経営コンサルタントとか、あとは日本改造のプランとか、考えたことは何でも紙に残しておこうと。私は自分の適正が政治家には向いていないと悟った。予測が失敗したというか、自分の能力と、都政を直すという能力には自信を持っていたし、やらしてくれたらかなりやっただろうと思いますけど、でもそういうものじゃないんだなと。政治はもっと優しい言葉で、選挙民に対しては若干「浮く」ようなこともいわなきゃなんない。私はそれができないから。「餅は餅屋」なんだから、自分がそれに向いていなくてもやることはいっぱいあるのだからいいじゃないのと、足を洗った。
・私が死ぬまでには人材を残したい。もう一つ、日本はこうしてもらいたい、こうしたらいいんじゃないかというのをまとめたい。できたら養成した人材の中からそういうことを専門にやってくれる政策提言の集団のようなものを作り上げたい。これは自分で十分できる範囲だし、従来の延長線上でできると思っているので、それやって死んでいったらちょうどいいのではないか。
・「SAPIO」という雑誌に書いたことだが、「ブレイン・ジャパン」というのを作って、政党によらず、「日本というのはここまでできるんですよ」、「世界ではこういう事例もありますよ」と、もう少しわかりやすい政策提言集団というのを出す。今、知事が集まってどうのこうのといっているが、日本の政治に染まった人たちというのは物事を単純化して考えすぎる。消費税を使うとか、年金をどうするとか、「イエスか、ノーか」と来るけど、世の中はそういう単純なものじゃない。本当に考え抜いたらこういう政策が必要ですよと、それからゼロベースで作り直さなければならないことがたくさんある。自分としてはそういうのを全部書き出して、すべてのジャーナリストの人とか、市民のリーダーの人たちに懇切丁寧に説明していくためには、人数がいる。そういうふうな人たちを全国に回らせて、理解されていないのはどういうところかとフィードバックをいただいて作り直すという、これはサッチャーさんのやったシャドウキャビネットの役割なんだけど、こういうことをやってったらいいのかなと。

・(日垣)道路公団の民営化が出たときに、大前さんは「腐りきった組織がのさばるだけだ」と。また「民営化するということは未来永劫有料化」と、本質的なことをズバリとおっしゃった。これはカンでおっしゃっているわけではない、と。
・事実からいうと、道路公団はもともと吉田茂さんのころの法律で、20年たったらつぶすことになっていた。あまりにも税金が足りないので、有料道路を造って、20年たって道路ができたら解体しましょうと、こういう約束でできた。それを何で、民営化という形で恒久化する必要があるのか。民営化すると株主は国民になるから、国民が株を持っているものをつぶすわけにはいかないとなる。これは約束違反なのだ。世界中を見てみると、民営化した道路なんてほとんどない。道路というのは、先進国はだいたいタダ。そういうことから、国道0号線というのを作って、国道1号線以降+国道0号線で、必要なものは税金でやると。そのかわり、28兆円も残してくれた道路公団の借金、これは現役世代が返しましょうと。次の世代は絶対に返せないから。私はプレート課税というのを提案した。乗用車は1万円、トラックは10万円、高速道路で払ってくださいと。払った上で、そのプレートをつけている車はタダで通ってくださいと。それで払ってない人、自分は絶対に高速道路に乗らないという人はピンクのプレートをつける。10年たったらこの借金は消える。そうしたら次の世代に28兆円残さなくて済む。道路公団の奴らは28兆円の借金と利息を含めて50年引き延ばしてしまった。私のいうようにしたら、道路はこれから税金だけでやっていけるし、今のガソリン税が13兆円あるので、これで十分やっていける。道路族が提案している日本全体で2万8千キロの道路も、全部できる。だからこれをつぶして、公団もいらない、国道0号線で終わりだと、こういう提案をしている。
・これは予測したわけではなくて、事実として、吉田さんの時に20年といったのだから。歴史的な事実と世界的な傾向をふまえて。ただこんなことをしたらろくでもない組織が残って、どうしようもなくなるという予測はした。結局その通りになって、道路公団に新しい道路を造ってくださいと頼んでいるけど、高速道路は税金で造って構わない。借金はどうしても返さなければならないので、これについては日本の次の世代は絶対に返せないと、人口が少なくなっていますから、だからこれについては現役世代が返しましょうと。現役世代がゆとりあるうちに返さないと返せませんと。これはほとんどの人はわかっていても、知りたくないのではないか。自分が払うのが嫌だという話。
・私は自分のメディアを持ち、自分で出版をして、自分の放送局を持ち、自由なことを言えるためにスポンサーにも依存しないで、全環境を整えているので言える。
・日本の将来のことを考えると、エスタブリッシュメント側についた発想ではダメ。国民に対しても、こういう苦しみがあるけれども一緒に耐えましょうというのがリーダーの役割。甘いことばっかり言って票がほしい政治家の人たちがこれをやるのはむずかしいし、私自身も1回やってみて、これがいかにむずかしいかということがわかった。
・今の日本人の平均年齢が49歳。社員の平均年齢が49歳で、会社がどのくらい活性化しないかわかるだろう。2025年には国民の平均年齢は59歳になる。米を作る人の平均は今日59歳。ここにお金をつっこんで生産性が改善するのかと。日本にとって一番恐ろしいのは年齢構成。改革をするためには若い人たちが、自分たちの将来があると思ってやらなければならない。ところが若い人たちが抵抗しないように、偏差値か何かで育てているので、だから私は若い人たちに怒ってくれと叫んでいるのだが、怒らない。金利0.1%で怒らない国民は日本だけ。日本人は怒らないように教育されている。
・今私は株式資産形成講座をやっているが、半年ぐらい勉強していただくと、世界の常識的な資産運用の方法がわかる。受験をあれだけ一生懸命やるんだったら、その何分の1かの時間と努力で十分できるようになる。歳はいくつでもOK。使うのは加減乗除と鶴亀算ぐらい。小学校でもできる。世界の、われわれと同じようなサラリーマンが、たとえばイタリアではどんな資産運用をしているのか、イギリス、シンガポール、アメリカ…… 一番すごいのはオーストラリア、去年国民の平均が11%。そういう国ではどんなことをやっているのか、興味を持たないのかと。私には不思議でしょうがない。それでFPを呼んできて、0.13% と0.15%の金利の違いを説明するのは、よその国では「目くそ鼻くそ」の世界。そこで満足する理由は、「答えはこれだ」と教えてもらって、銀行金利はこれくらいと、当たり前と思ってしまう。
・家やマンションを買うかどうかという意志決定は、人生の中で一番大きくなってしまっている。これには大きな疑問を持っていて、まず「買うべきかどうか」からスタートする。何を基準に決めるかというと、自分の身体に通勤がどれほど危害を加えるか、つまり自分の働く環境をベストにしていくためには、通勤の負担をうんと少なくする必要がある。少しでもお金があれば自分に投資して、少しでも会社で仕事ができるようにするために投資をする。それは学校で教わったことではできない。そうじゃない勉強を自分でしてみる。その投資の最大の原資は時間。その通勤の時間で2時間浮かせたら、年間では18,000時間浮く。そこで何をやるか。自己投資をして、稼ぐ力をつける。稼ぐ力をつければ、家はどうやって買うかとか、金利がどうかなどは非常にマイナーな問題になる。21世紀は収入格差が300万と3億で100倍になる時代。3億稼ぐ人は世界にはざらにいる。
・これからの時代は、当たり前のことをする人は、中国やインドにホワイトカラーでも仕事も持っていかれる。今、コンピュータプログラムはインドに持っていかれたら、それ以下の値段じゃないと日本では受注できない。だからプログラムにしても、お客さんの業態にあわせた提案ができるとなれば、お客はその人に3億円払う。実は300万円と3億円はちょっとした違いに過ぎない。スキル的にはほとんど同じ。そこでちょっとひねって、おたくの業態ならこんなふうにしたほうがいい、そのためにはパッケージで、などとやれば10億浮かせられるかもしれない。そうなれば3億惜しくないと。価値を提案できる人というのは、知識やスキルではそんなに違いがない。心がけとかオリエンテーションに違いがある。
・価値が提案できるようになるためには、自分が3億円稼ぐにはどうしたらいいか、毎日考える。それは相手が30億少ないやりかたでできるのか、ようするにお客さんのことをひたすら考える。経営においては「稼ぐ力」と「影響力」はほとんどイコール。世界で見ても、インパクトのある提言を出せる人が高い給料になってどんどん進んでいく。それがインド人であれ中国人であれ韓国人であれ、という時代。国際的な場に出て飯を食っていくことができるか、これを1回やってみればわかるが、藩基文が国連総長になって、韓国人にはものすごい光明。がんばればあそこまでいけるんだと。すごくいいエグザンプル。
・金利の低い時代の住宅価格は安い。金利が上がると住宅価格も上がる。それは自動的に調整されてしまう。この二つは等価になるように計算されているので、あまり苦労して計算してもはじまらない。どっちがトクかということは結局ふたを開けてみなければわからない。リスクをゼロにしようと思えば固定にしなければいけないし、その裏が変動で、価値としては同じ。違うように思うかもしれないが、馬券を買うのと同じ。どれがアタリだったかという話で、結果的にふたを開けてみればイコールだったと。固定金利と変動金利は、今のリスクの考えかたでは等価になっている。だからどっちでもいい。固定して安心すると思った人はそうすればいいし、低金利でいってあとで後悔してもいいという人はそうすればいい。等価ということをわかってほしい。今日為替を予約(ヘッジ)してみて、後になってラッキーだったかどうか。運の問題だけになる。

 最後のあたり、たしかにおっしゃるとおりなのでしょうが、安い金利になれていたものが3年とか5年経ってドンとあがればやっぱり大変でしょうね。私は住宅ローンについてはまったく知識がないのですが、まだしばらくは低金利が続くような感じですね。「金利うんぬんより、稼ぐ力をつけろ」とおっしゃる点には賛成です。

【サイエンス・サイトーク】
大前研一「予測力を高める方法」2008年3月9日放送
大前研一「財産を使い切って死ぬには」2008年3月16日放送

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posted by zxcvaq at 07:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンス・サイトーク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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